パークアベニューエム 物語

「ただいま。」

誰もいない部屋に帰っても、無意識に口にしてしまう。翔大はまだ一人暮らしを始めて2ヶ月だ。この春、東京の国分寺にある大学に通う事になり、18年暮らした岡山から一人で出てきた。

  

 

 「国分寺にようこそ。まあ、まずは、お茶をどうぞ。」

初めて不動産屋に入ってみた日を昨日のように思い出す。

東と南に窓があり、明るい光が差し込む店内。

物件まで歩いて案内してもらいながら、

いろんな話を不動産屋の女性スタッフからしてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 「この辺りは大学が多いから、一人暮らしの学生さん向きのお店が多いんですよ。

夜遅くまで空いている飲食店も沢山あるし。

バイトできる所もいっぱいありますよ。

大学に入れば、お友達も広がるから、いろんな楽しい経験ができていいですね。」

 

 

 

 

 

 

 

「今回ご紹介する部屋は、家具付きなんです。

だから、家具を買う手間が省けます。

IKEAで購入した新品の家具ですから、デザインも良いし、素敵ですよ。」

 

「この空間気持ち良いかも。」

なんだか感覚的に落ち着く。

クローゼットは撤去され、代わりにオープン収納棚がある。

103号は1階だけど半地下だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと暗くないかしら。日当たり悪いと体に悪いわよ。洗濯物も乾かないし。」

だけど、翔大はその暗さが逆に好ましかった。落ち着いた洞窟みたい。

 

「俺、ここにする。」

 

「いいの?まだほかにも見た方がいいんじゃない?予算も少し上げても良いから、見比べてみなさいよ。」母は慌ててそう言う。

だけど、翔大は心に決めていた。

 

 

 

東京、国分寺、この大学に合格しなければまず住むこともなかっただろう。

岡山から遠く離れて自分はここから新しい一歩を踏み出す。

恐くないと言えばうそだ。

パークアベニュー国分寺103号。

名前の通り、このアベニューから彼の人生は未来は、始まったばかりだ。

カテゴリー: スタッフブログ, 清水のリフォーム速報   パーマリンク